工房の片隅から、変わった形のヘラが出てきた。
まるで卒塔婆だ。
私が譲り受けたここは、祖父が使っていた工房だ。
祖父の作品の欠片や資料が、そこかしこに遺されたままだ。
これもおそらく、祖父が削ったヘラなのだろう。
道具に呼ばれる、ということがある。
今日、茶盌を削ろうとして、ふとこのヘラが目に入ってきた。
初めてこれで削ってみた。
新たな景色が現れた。
道具には使うタイミングがある。
この土の、この固さで、こうやって使うと、このような表現になる。
そのタイミングが今だった。
道具にも出会いがある。
長く持っているが、使われずに眠っている道具もある。
でもこうやって、いつか活きる時が来る。
だから道具と出会った時は、使わずとも手に入れるようにしている。
今日は、祖父からの贈り物を受け取った。
(文 加藤亮太郎)

